このブログシリーズの最初の記事 (ビジネスリーダーがインテグレーションに注目すべき理由) では、すべてのビジネスリーダーがインテグレーションに注目すべき理由を述べました。ビジネスの観点から見ると、モダンインテグレーションによって生まれる価値は莫大です。この記事では、まず 6 つのビジネス価値のひとつである「市場投入までの時間短縮」にフォーカスします。
どんなビジネスにおいても、市場投入に要する時間は気になるものです。「スピード」、「アジリティ」、「ベロシティ」という言葉をビジネスに利用する場合、一般的に市場投入までの時間を短縮することを表します。SEC EDGAR データベースを検索すると、登録されている年次報告書の大半 (3,000 件以上) で「スピード」という言葉が使われています。スピードはどんな業界であっても重要です。しかし、大半の企業にとって、それは現実的ではなく絵に描いた餅にすぎません。
MuleSoft の接続性ベンチマークレポートによると、87% の組織が、インテグレーションに関する課題がデジタルトランスフォーメーションの取り組みを妨げていると回答しています。モダンインテグレーションがなければ、ボトルネックが発生してしまい市場投入までの時間が遅くなります。
それでは、モダンインテグレーションの導入により、市場投入までの時間の短縮をどのように実現できるのでしょうか?モダンインテグレーションを正しく実行すると、開発者の生産性が向上します。開発者の生産性が向上すると、インテグレーションプロジェクトをより迅速に完了・提供できるようになります。インテグレーションプロジェクトが迅速に完了されると、プロジェクトのクリティカルパスの大部分を排除できます。
ユースケースの例:5,000 万ドルのモバイルアプリを提供する小売企業
それでは、具体例を見ていきましょう。新しい顧客向けモバイルアプリを売り出す小売業者を想定します。この会社は今後 5 年間で 5,000 万ドルの収益増を見込んでいます。
IT チームは、このモバイルアプリを稼動させるまでに 12 か月かかると見積もっているため、1 年目の売上は計画していません。収益は毎年増加すると予想しており、その予測は、モバイルアプリを使用するユーザーの自然増と、アプリの継続的な改善 (新機能の導入など) の両方に基づいています。年間収益増加の 60% はユーザーの自然増に起因。40% は継続的な改善に起因するものと試算しています。
では、このモバイルアプリの市場投入までの時間を短縮した場合を想定しましょう。最初のリリースだけでなく、市場投入後の機能強化のための時間も短縮ができると考えます。その中で、モダンインテグレーションは、どういった役割を果た果たすのでしょうか?Gartner によると、一般的なモバイルプロジェクトでは、プロジェクト作業の最大 70% がインテグレーションに関連しています。そのインテグレーション作業を大幅に削減できると考えてみてください。
Omdia によると、MuleSoft を活用してモダンインテグレーションを強化した顧客は、インテグレーションのデリバリースピードを平均 78% 向上させています。このモバイルアプリプロジェクトの 70% がインテグレーションである場合、このプロジェクトのリリースが 6 か月短縮されます。つまり、収益につながるまでの期間が短縮され、売上に 300 万ドル近い影響をもたらします。
ただし、市場投入期間の短縮は、最初のリリースに限定されるのではありません。このアプリを継続的に機能強化することで、顧客体験を向上させ、収益を増加させることができます。前述のように、収益増加の 40% はアプリの改善に起因すると予測しています。
現状では、各機能強化に約 4 か月かかると IT チームは見積もっています。つまり、1 年間で実質、3 回の機能強化ができることになります。ただし、顧客からのフィードバックに対応したいので、モバイルアプリの運用を半年ほどしてから機能強化に取り掛かることとします。つまり、「1 年目」の機能強化は 1 回のみと想定します。さらに、各機能強化の実効値を以下のように予測しました。
最初の市場投入までの時間の計算に使ったのと同じ仮定とロジックを適用すると、モダンインテグレーションによって、機能強化のリリースにかかる時間は 4 か月から 1.8 か月に短縮されます。機能強化が、年間 3 回から 6 回に増えることとなるのです。そして、これらの機能強化による収益増加は、5 年間で 8,800 万ドルに上ります。
これらをまとめると、モダンインテグレーションによりモバイルアプリからの新たな収益予測は、5 年間で 1 億 4,500 万ドルになります。
これは、当初のビジネスケースの予測と比較して、5,500 万ドル (+61%) の純増に相当します。
これで、ビジネスリーダーはこのビジネス成果 (金銭的価値) に注目するようになります。これは架空の例ですが、それがもたらすインパクトは決して架空ではなく、その大きさも桁違いです。ユニリーバは新しいイニシアチブを 3、4 倍のスピードでデプロイし、アシックスは新しい eコマースプラットフォームを 2.5 倍のスピードでデリバリーし、エアバスはプロジェクトを 4 倍のスピードでデリバリーしています。IT 部門と共同で確立したインテグレーション戦略がある場合は、イニシアチブからどれだけのインパクトを引き出すことができるかを考えてみてください。
インテグレーションはビジネスリーダーにとって最優先事項であるべきです
モダンインテグレーションは、市場投入までの時間に大きなインパクトを与えます。インテグレーションはビジネスリーダーにとって最優先事項であるべきであり、それは必然でしょう。このデジタルエコノミーにおいて、リーダーの資質はインテグレーションで決まります。その重要度の大きさから、インテグレーションの判断はもはや IT 部門だけで行うことはできません。インテグレーションは、その影響度と影響範囲を考慮するほど、経営判断が必須だということは誰もが納得するでしょう。
それでは、次のデジタルイニシアチブのために、自社の IT チームにすぐに問いかけられる質問をいくつか紹介しましょう。
- 必要なデータ、アプリケーション、ビジネスプロセスを接続するためのインテグレーションをどのように構築しているか?(API ベース、バッチ、ポイント・ツー・ポイントなど)?
- このアプローチで技術的な負債が生じていないか?生じている場合、下流にどのような影響があるか?
- このインテグレーションアプローチは長期的にどのような影響があるのか?アップデートや機能強化、通常のメンテナンスは簡単になるか、それとも難しくなるか?潜在的なコストと収益に対して、どのような影響があるか?
- 初期リリースのインテグレーションの市場投入までの時間はどのくらいか?今後のアップデートと機能強化の市場投入までの時間はどのくらいか?これらを改善するためにはどうすればよいか?コストと収益にどのようなインパクトがあるか?
このブログシリーズの次の記事では、モダンインテグレーションが組織内のイノベーションに与える影響について詳しく説明します。
MuleSoft の Mobilize チームは、独自のコンサルティングアプローチにより、ビジネスに焦点を当てたインテグレーション戦略の確立をサポートします。お気軽にお問い合わせください。