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近年、MuleSoft ではインテグレーション、API 管理、自動化の分野の機能を拡充しています。こうした機能により、企業のデジタルトランスフォーメーション (DX) の実現、コンポーザブルエンタープライズ (組み立て可能な組織) の構築をより簡単になります。

Salesforce の最近の調査では、自動化に対する需要が急増し、RPA 市場が勢いを増しているにもかかわらず、多くの組織が、この技術について今まさに学習かつ評価し始めたばかりであることがわかりました。本記事では RPA をわかりやすく解説し、RPA がもたらすビジネス価値の機会拡大について説明します。さらに、企業がこの技術を大規模に導入するときに直面する普遍的な課題について取り上げます。

RPA 入門:ロボティック・プロセス・オートメーションの課題と可能性

一言でいうと、RPA とは RPA ボットの作成に使われるソフトウェアソリューションです。さまざまな業務プロセスにおける人的な手作業を模倣するように RPA ボットのスクリプトを記述。または「トレーニング」することで、その業務プロセスを自動化できます。

ここ数年、RPA は企業の DX ジャーニーのための最優先事項でした。Gartner の最近の調査によると、新型コロナによって企業が対応せざるを得なくなった「組織面」と「業務面」の変革を鑑みるに、RPA の重要性は今後さらに増すと予測しています。これは的を射ています。企業が業務プロセスを 24 時間 365 日、従業員の関与なしに実行できれば、生産性と効率性を大幅に向上できます。

しかしながら、手作業の業務プロセスのすべてが、RPA の対象として適しているわけではありません。出発点として、次のような業務プロセスが RPA に向いています。

  • 反復的であること:RPA の価値は、手動かつ時間のかかる作業を自動化することで高まります。たとえば、四半期に 1 回行う 8 時間の処理よりも、毎日 1 時間行う処理を自動化するほうが、組織はより大きな価値を得られます。
  • ルールに基づいていること:プロセス全体を通して、人による判断は最小限である必要があります。RPA 単体には、判断に基づいて決定する認知能力が備わっていません。しかし、業務プロセスに 100% の一貫性があるわけではありません。業務プロセスの主要な「ハッピーパス」 (期待どおりのシナリオ) から外れた既知のプロセスに対しては、ルールベースのオブジェクションハンドリングを含めることで対応することができます。
  • 標準化されていること:頻繁に変更されることのないプロセスでなければなりません。前項で述べたポイントと同様、業務プロセスはプレビルドのパスまたはデシジョンツリーに沿っている必要があります。
  • デジタルであること:プロセス全体のインプットとデータが、デジタルで保存されるかアクセス可能でなければなりません。最善シナリオの観点から、ERP や CRMなどのエンタープライズアプリケーションによる業務プロセスの方が、ローカルドライなどで管理されているスプレッドシートを利用するよりも望ましいと言えます。

以上の点を踏まえると、財務、人事、IT などのバックオフィス部門に RPA の機会が多く存在することがわかります。しかし上の条件を満たす業務プロセスであっても、RPA ですべてが解決するとは限りません。

簡単な例として、あるアナリストの例を考えています。彼は毎日のセールスデータを取得し、より深い分析のために毎回 30 分かけてデータ列を並べ替える必要があるとしましょう。確かに、RPA はアナリストのデータ列の並べ替えに費やす時間を排除してくれるソリューションですが、このシナリオに最適なソリューションであえるとは言えません。おそらく、利用しているデータウェアハウスに、このアナリストが必要とする形式や構造でデータ抽出をしてくれる機能やソリューションが備わっているはずです。業務プロセス評価のすべてに当てはまることですが、RPA をソリューションとして採用する前に、まずは既存の (導入済みのソリューションを利用した) 代替案を検討してください。

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Forrester の推定によると、RPA ソフトウェア市場は現在 24 億ドルに達し、2016 年から 800% 以上増加しています。つまり、RPA はここ数年で爆発的に普及しているのです。

しかし、この急成長にもかかわらず、RPA を企業全体で持続可能な運用を実現しているのはひと握りにすぎません。ひとつだけの明確な理由があるのではありませんが、いくつかの具体的な課題を挙げます。

「よりスピーディー」な導入方法の採用

よりスピーディーに導入するために、当初の RPA ボットの構築はグラフィカルユーザーインタフェース (GUI) に頼ることがほとんどでした。つまり、マウスやトラックパッドなどで操作するインタフェースを使用していました。

この方法で直面する問題は、「アプリケーションの GUI レイアウトが常に固定されているわけではない」ということです。UI デザインは頻繁に更新されます。ソフトウェアのアップデートも、GUI レイアウトにも小さくない影響を及ぼします。たとえば、アプリケーション GUI の特定の場所にあるボタンをクリックするように、ボットに学習させていたとしましょう。

しかし、ソフトウェアのアップデートによってこのボタンの位置がわずかでも移動してしまうと、ボットに再学習させることが必要になる可能性が高いのです。つまり GUI を活用した RPA ボットは、スピーディーである反面、継続的なメンテナンスの負担が増えるリスクがあります。中長期的には、業務プロセスの自動化から得られるメリットが損なわれてしまう可能性があるのです。

もっと大きくかつ持続可能な価値をもたらすもうひとつのアプローチは、API (アプリケーション・プログラミング・インタフェース) の利活用です。API を利用すれば、ボットは画面の陰でコマンドを実行できるため、画面のロードのための待ち時間がなくなり、アプリケーション GUI の変更による影響を受けることはありません。さらに、この方法で RPA を導入すると、コンポーザブル (組み立て可能) な API 主導のアーキテクチャに備わっている「柔軟性」「適応性」「セキュリティ」を高めることが可能です。一方、ターゲットアプリケーションに API が存在しない場合、導入までの時間が長くなってしまうということがデメリットです。

単純作業から複雑なワークフローまでを自動化

多くの企業では、まずは単純作業や手作業によるデータ入力など、難易度の低い自動化を実装することよって短期的な成功を獲得します。RPA 機能が成熟していくにつれ、RPA ジャーニーの次のステップである、エンドツーエンドの業務プロセスとワークフローの自動化に進むことは、自然な流れでしょう。しかし単一の作業の自動化から、複数の分岐を持つような複雑な業務プロセスへの移行は、決して一筋縄にはいきません。

複数の手順で構成される業務プロセスでは、自動化に必要なインテグレーション、決定ポイント、セキュリティ管理、ユーザーなどの数が飛躍的に増加します。さらに、エンドツーエンドの業務プロセスの自動化には、複数のボットが必要となる可能性があります。仮に 1 つのボットのみが失敗することで、後続のボットがトリガーされなければ業務プロセス全体が失敗してしまいます。これらを考慮すると、エンドツーエンドのプロセスの自動化では潜在的な障害発生ポイントの数は、単一作業の自動化と比べ、はるかに多くなることがわかります。

しかし、複雑な業務プロセスに関連する障害を軽減させる方法は存在します。その 1 つは、RPA ライフサイクルの初期段階において、プロセスマイニングおよび設計に時間をかけ、投資をすることです。こういった初期ステージでは、業務部門と IT 部門が協力して、主要なプロセスのパスと意思決定ポイントを綿密に調査すると同時に、起こりうる業務プロセスのエラーや逸脱もすべて特定します。RPA プロセスアナリストは、プロセスオーナーにインタビューを数回行い、ビジネスプロセスの複雑な部分をすべて明らかにすること。そして、プロセスオーナーが業務プロセスを実行する様子をリアルタイムで観察し、どの範囲をどの程度自動化するかを完全に把握することを推奨します。

新しい働き方

企業は RPA の構築と導入、実行に全神経を集中させがちで、「ボットとの共存」という点はあまり検討されません。

RPA の採用が進むにつれ、企業内のあらゆる業務における従業員とデジタルワーカー (ボット) の混在がますます進んでいます。これにより、これまで企業が経験したことのない疑問が生じるでしょう。

  • デジタルワーカー (ボット) にもユーザー ID が必要か?
  • デジタルワーカー (ボット) がデータとアプリケーションにアクセスするには、どのようなセキュリティ制御と権限が必要か?
  • 監査とコンプライアンスにとって、どのような意味を持つのか?
  • デジタルワーカー (ボット) の管理監督は誰が行うのか?
  • 新しい自動化プロセスが正しく実行されていることを誰が監視するのか?
  • ボットが正しく動作しない場合、事業部門は誰に連絡すればよいのか?
  • RPA の導入により、これまで時間をかけられなかった価値のある活動に取り組めるようになったか?従業員をどのように再教育すべきか?
  • 従業員を新しく雇用すべき役割は何か?追加すべき職種はあるか?

これらの他にもさまざまな疑問があります。変更管理ための機能コンポーネントを RPA 戦略の一部として最初から用意することは、企業が持続可能で長期的な RPA の拡張性を獲得する手助けとなります。

コスト削減にとどまらない効果を獲得

RPA ソリューションの導入目的を尋ねると、最初に返ってくるのはほとんどの場合「コスト削減」という回答です。確かにこれは真実です。RPA は膨大なコスト削減をもたらしてくれます。特に、反復的な手作業が随所に存在しているバックオフィス業務では効果は絶大でしょう。

一方、コスト削減の先にあるものを見据えて、RPA がもたらす変革の価値を最大限に引き出すことが何よりも大切です。出発点がコスト削減であるのは自然なことですが、多くの場合、企業は RPA がより多くの戦略的な価値創出の推進力を業務にもたらしてくれることに気づくはずです。顧客と従業員のエクスペリエンスの向上、コンプライアンスの強化とリスク軽減、そして事業の成長も、今日の組織が実現し、RPA がもたらす価値を定量的に示せる数多くの成果の一部にすぎないのです。

結論

RPA が企業にもたらす潜在的なメリットは大きく、シンプルな作業のための RPA ボットを導入することは特に難しくはありません。しかし、企業が、大幅なコスト削減、顧客体験の向上、事業の成長促進を目指すのに欠かせない長期戦略として RPA を活用し、その価値を最大限に引き出すためにはさまざまな障壁が存在します。

RPA をすばやく導入して、短期間で成果を上げたい気持ちになるかもしれません。しかし、企業は、時間をかけて RPA チームが成功できるよう導き、RPA が持続可能な企業ソリューションとして確実に成功できるようにしなければなりません。