先進的なビジネスリーダーは、デジタルエコノミーにおける新しい機会を活用して挑戦を続けています。このデジタルエコノミーとは、コロナ禍によってもたらされたシステムの移行に端を発します。リモートワークやハイブリッドワークからビジネス戦略の調整に至るまで、膨大な数のプロジェクトのハンドリングに CIO や IT のリーダーたちが振り回されるのはよくあることではないでしょうか?
CIO ディスカッションシリーズにおいて、Salesforce の CIO である Jo-ann de Pass Olsovsky と他の業界リーダーが、コロナ禍で直面した課題やハイブリッドワークの成功を目指して自分の組織をどのように整えてきたかについて説明しています。Olsovsky はハイブリッドワークにおける CIO の役割を吟味。デジタルテクノロジーの導入が進むことで CIO の仕事にどのような影響があったかを詳しく探りました。Olsovsky は分析の中で、「近い将来、CIO が取り組むことになる最大の課題とは?」「デジタルファーストのビジネス環境への急激な移行の影響は?」「IT とビジネスの融合により CIO はどのように多面的な役割を担うべきか?」について掘り下げました。
この議論は、シリーズの第 2 回目にも続きます。そこでは、Olsovsky は CIO がどのように従業員エクスペリエンスを再定義したかについて探っています。シリーズの最終回では、ハイブリッドワークモデルについて説明しています。ハイブリッドワークの実現に必須となるツールとデジタルインフラストラクチャを構築するうえで、 IT が果たす重要な役割について語っています。
本ブログ記事では、CIO ディスカッションシリーズ内での 3 人の業界リーダーの話を通して、リーダーがデジタルエコノミーで生き残るために導入、利用している戦略、イニシアチブ、優先事項について理解を深めます。
デジタルエコノミーで生き残るために必要な 3 つの優先事項
1. シームレスでハイブリッドな顧客と従業員のためのエクスペリエンスを提供する
デジタル化したカスタマーエクスペリエンス (CX) をストレスフリーで提供することは、デジタル戦略を成功させるうえで最も重要な要素のひとつです。つまり CIO は、企業の全部門を横断してシームレスなハイブリッドエクスペリエンスを設計し、世界中の顧客と従業員のニーズ変化に対応しなければなりません。そのためには、時代遅れのレガシーシステムを全面的に見直さなければなりません。つまり、レガシーシステムを統合ツールに置き換えるのです。この統合ツールとは、コラボレーションの実現、従業員のスキルアップへの投資、ハイブリッドワークおよびビジネスモデルの導入を通して、さまざまなチームやオフィス間の連携をもたらします。
「IT チームの重要な役割のひとつは、コンポーザブル(組み立て可能)な基盤を作ること。そして、自社の業務部門の従業員を教育することで、データの可能性をセルフサービスで広げながら仕事を進められるようにすることです。その結果、大規模なイノベーションを安全に実現することが可能になります」
Brent Hayward, CEO, MuleSoft
「従業員をデジタルに精通させること」に加え、「データ管理システムを統合すること」、「統合ツールを最適化させること」そして「再利用の文化の導入すること」は、CIO がワークプロセスを増強するうえで重要なステップとなります。
2. デジタルビジネス戦略を再設計して IT デリバリーのギャップを埋める
コロナ禍は、テクノロジーを最も混乱させるモノのひとつです。この混乱により IT リーダーは、年単位や月単位だったデジタルイニシアチブを、日単位や週単位に加速させなければなりません。IT デリバリーギャップが拡大するのに伴い、CIO は、ビジネスの維持からデジタルイニシアチブの加速に力点を移し、新しいデジタルファーストの世界で競争力を保たなければなりませんでした。では、どうやって実践したのでしょうか?デジタルロードマップを描き出し新しいワークモデルに適応するために、IT リーダーは自動化に投資しています。また、API、クラウド、データレイクなどの新しいテクノロジーを積極的に導入することで、顧客ニーズに迅速に応えています。
Tableau の CEO である Andrew Beers は、デジタルエコノミーで競争力を保つために CIO が採用してきた戦略について詳しく説明しています。
「企業が将来成功するためには、今すぐデータに対して最大の賭け(投資)をする必要があります。クラウドは、人々が自分のデータにアクセスする最初の場所になりました。さらに、AI や機械学習によって分析の分野が急激に変化しています。こうしたトレンドは業務に膨大な影響を与えます。そのため CIO は、適切なアナリティクス戦略を策定・実行し、組織内の人々がデータをより深く検討できるようにすることで、ビジネスの可能性を拡張できるようにすることが必須です。技術的な専門知識を人や働き場所に頼るべきではありません。このような環境が用意されているというこが、重要であり必須なのです。」
Andrew Beers, CEO, Tableau
3. 俊敏性を獲得しつつデータを保護する
今日の経済でデータは最も価値の高い資産のひとつです。業界や部門を問わず、世界中のビジネスリーダーは、データがもたらすインサイトや経済的メリットの価値を認めています。結果として、効果的なデータガバナンスは IT リーダーの最重要課題となり、新しいテクノロジーの導入を成功させることはビジネスの成功に不可欠となりました。そこで CIO は、自動化と機械学習のテクノロジーに投資してイノベーションと俊敏性の文化を推進し、優れたハイブリッドエクスペリエンスをの創出と拡大をさせる必要があります。
CIO の役割は常に変化します。過去 19 か月の間、CIO の役割はテクノロジスト、事業戦略家、ビジネスイノベーションの責任者へと変化してきました。不安定かつ複雑な新しい世界で、CIO は組織に俊敏性をもたらすリーダーである必要がありました。すなわち、新しいテクノロジーや役割を迅速に取り入れることで、デジタルエコノミーの中で自社の長期的な成長を推進してきました。
Mulesoft の戦略およびイノベーション担当バイスプレジデントである Paolo Mallinverno は、デジタルリーダーとして CIO の役割の進化について、次のように説明しています。
「CIO は、在宅業務が広がる中、事業部門や管理部門の業務がスムーズに進むようにサポートする必要がありました。さらに、CIO は加速化するデジタルトランスフォーメーションのスピードに対応しなければなりません。その結果、長期的な戦略を立てるという余裕が持てなくなってしまいました。現在 CIO は、意思決定を担う役職者でも、5 か年計画の責任者でもなく、『実行者』や『計画の実施者』になったと言えるでしょう」
Paolo Mallinverno, VP of Strategy and Innovation, MuleSoft
デジタル時代の中で前進する
ビジネスに対してコロナ禍がもたらした教訓があるならば、長期的な成功と従業員エンゲージメントは、CIO のリーダーシップに大きく左右されるということでしょう。CIO の貢献は明白です。そのおかげで、企業は不確実な時代にビジネスを維持できるだけでなく、ビジネスの成長を促進できています。私たちは今後もデジタルに関する課題や機会に対応しながら、世界中の IT リーダーの知恵と先見性を頼りにしていくことでしょう。